インターネットは脳力低下を招くのか『ネットバカ』
- 作者: ニコラス・G・カー,篠儀直子
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2010/07/23
- メディア: 単行本
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久しぶりに丁寧な良書に巡り会えたと思った。ただあまりにも邦題が残念。インターネットによる思考力低下を示唆するメタ構造になっているんじゃないかと勘ぐってしまった。
インターネットと読書に比較でいくと、使っている脳の回路が違う。
ネットでは、紙媒体を読むのとは違うニューロンが反応している。見方によれば進化をしていることになるが、実際のところ紙媒体を読むときに使われていた、注意力や思考力が散漫になり、むしろ退化しているのではないか、というお話。
私たちは、ネットでいろんなハイパーリンクを辿って情報を取得しているつもりが、思考も記憶もろくに働かせず、消費しているだけになる。
リンクを見つけたらクリック。
レバーを押したらエサが落ちてくるケージに閉じ込められたラットのように、ひたすらカチカチやっているだけなのだ。
広告とリンクがコンテンツに絡み合う現在のインターネットからは、読書の時に感じた深く静かな思考は生まれない。
電子書籍であっても、どこぞの誰かの注釈が自分の本の上に現れてしまうような「ソーシャル」な機能が付け加えられてしまうと、やはり今までの読書とは異質なものになってしまう。
もちろんインターネットはクールだ、と著者は言っている。後戻りできないだろうこともわかっている。大事なのは、ネットが今までの紙媒体とは違う効用を私たちに与えていることを知ることだ。
ネット事業者、とくにサービスをデザインする人は読んでおいて損はない。
この本に書いてある「理想」の逆をいけば、手軽く稼げるネットメディアを作れるだろう。ユーザーをバカな状態にさせておくことで利益を得ることが出来る、という意味において。
以下の本も合わせて読むといろいろ見えてくると思う。
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2010/10/26
- メディア: 新書
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