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過去記事置き場

新しいエヴァを観た。がっかりした。

たまたまテレビでやっていたので、途中からだったけど観てみた。
確かエヴァの二番目の劇場版だ。
坂本真綾が眼鏡娘をやってるやつ。

僕は観てすぐに気づいたことは、これは自分の知っているエヴァじゃないということだ。
あのころ観たエヴァはもっと世界に奥行きがあった。
キャラクターも厚みがあった。
いや、厚みのあるキャラクターに押されて碇シンジが薄っぺらな自分が押し潰されそうだ、ということを感じて足掻いている姿というのを感じることが出来た。
そんな記憶がある。

しかしながら新しい、この劇場版はどうにも映像が陳腐である。
当時に比べてアニメの世界でもCG技術が発達している。
例えば司令室のモニターやATフィールドの部分など、思いっきりCGでデコレーションされている。視覚情報としてはディテールが増している。
ゆえに、しょぼい。
安直な映像のオンパレード。

さらに輪をかけて演出が良くない。
映画なのにベラベラとしゃべりまくる脚本も良くないが、コンテ・演出に至っては世界に奥行きがなくなっているし、人物は薄っぺらな紙人形になってしまっている。

当時は、すべて作画で処理していたし、何よりも制作が追いついていなかったから、リミテッドアニメの真骨頂のような(良い意味での)手抜き演出が行われていた。
エレベータでシンジとアスカが黙り込むシーンなんて、まったく絵が動いていない。
それなのに緊張感もキャラクターの厚みも伝わってくるだろう。

おそらく今の庵野は金もあるし、時間もあるのだろう。
やるからには完璧にやりたい。
それで時間をかけて、以前空けてしまった隙間を埋めるだけ埋めてしまったら、映像作品としての価値が落ちてしまったのだ。
工夫が消えると、クリエイティブの質が落ちるということである。

新しいエヴァはそのことを僕に教えてくれた。
金と時間があれば完璧になるなんて幻想だ。

クリエイティブとは、足りないものを工夫で補うということ。
このことを心に刻んで寝ることにする。