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過去記事置き場

『スパルタカス』スタンリー・キューブリック

一人キューブリックレトロスペクティブを開催中ですが、その第二弾です。

スパルタカス スペシャル・エディション [DVD]スパルタカス スペシャル・エディション [DVD] [DVD]
出演:カーク・ダグラス
出版:ジェネオン・ユニバーサル
(2012-04-13)

実は今まで観てなかったんですね。DVD持ってたのに。だって190分ですよ?キューブリックの映画を思い出してください。2001年宇宙の旅バリー・リンドンアイズ・ワイド・シャット・・・。素晴らしい映画だと思いますが、結構体力食うんですよね。
しかもこの作品は曰くつきで、キューブリック自身は「自分の作品と認めない!」とか言っちゃうし。
正直いいかなって、観なくていいかなって、おれ思ってたんですよね。でもこの際だから観たんですよ。
そしたらね。

すごく面白いです。

ハリウッドがまだまだ全盛期の力を持っていた時期だからか、脚本がよくできてるなと思いました。
テンポがゆっくりなんですけど、ダレないんですね。そこに驚きました。

190分通して観てわかったことは、キューブリックがなんと言おうと、この作品はスタンリー・キューブリック監督作品だということです。
ひと通りキューブリック映画を観た人間からすると、共通点を結構見つけられます。

例えば最初のシーン。
鉱山で働かされる奴隷として登場するスパルタカスがローマ兵に反逆するシーンなんですが、当然反逆したからにはローマ兵に鞭打ちをくらうんですけど、これまんま時計じかけのオレンジのアレックスの妄想シーンなんですよ。どっかで観たぞってなる。

それからクラッススとの会戦シーン。
凄いスペクタクルなんですけど、これもどっかで観たぞってなります。
どこかっていうとバリー・リンドンですね。あれの合戦シーンです。

剣闘士訓練所内の撮り方なんてキューブリックのレイアウトですし、そこから反乱を起こすシーンも、時計じかけのオレンジの乱闘シーンを思い出します。狙ってやってるのか、どうしてもそういう色になってしまうのかわからないですけど、キューブリックです。

この作品はカーク・ダグラスがプロデューサーも兼ねてますけど、キューブリックが色々問題を起こすもんだから「才能のあるクソ野郎」なんて呼ばれてしまうんですよね。
これに懲りてキューブリックもハリウッドから距離を取るわけですけど、スパルタカスを観ると、ここで得た経験が次に繋がっているんだなと思えてきます。本人は認めたくないのかもしれないけど。

他人の手の上で大きな仕事をすると人間って成長するんじゃないかなと勝手に思ってますが、この作品がキューブリックの転換点なんだなと実感できる。

本人が認めていないから観る必要がないというわけではなく、むしろ観るべき作品。
それに、普通に面白いですよ。