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『貧困大国アメリカ』を読んで

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
著者:堤 未果
販売元:岩波書店
発売日:2008-01
おすすめ度:4.5
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この本に書いてあることが本当であるのならば、アメリカという社会が自由競争の結果、弱肉強食の階級社会に戻ってしまったと云えるだろう。
今、アメリカ合衆国には中流がいない。
仕事はノルマに追われ、それでいて激しいコストカットのため、余剰人員を雇わないので、現場の人間が疲弊してしまう。
病気にでもなると、バカ高い医療費を払うために借金をしなければならず、低所得者であれば、骨折しただけで自己破産への道を突き進むことになる。

この本を読んでいると、本当にアメリカは悲惨だ。
しかし、この悲惨とはまるで無関係のように、現在もアメリカは世界大国だし、新しいイノベーションを生み出していることにも注視しないといけない。
大量の貧困層と、イノベーションによる価値創出が、本当に同じ自由主義の元で生みだされたのだろうか。

新しい価値を生み出せずにいる日本は、確実にアメリカ型社会に向かっている。
しかし、その恩恵であるはずのイノベーションが起こっているかというと、明るいニュースは最近聞いた覚えはない。
あったとしても任天堂くらいだろうか。

自由な競争社会というのは、現在もしくは明日の仕事のために頑張るという、一見とても健全なように思えるが、実は心の余裕のないまま馬車馬のようにこき使われ、長期的視点を失っていく社会なのではないか。
余裕を持てる社会において、競争するのは構わない。それこそイノベーションを生まれるに違いない。
しかし、弱者の生存権を奪い取って「さぁ、生き残りたければ競争しろ!」という社会では、ただ弱い人間が使い捨てとして消費されていくだけではないだろうか。