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書評『「狂い」のすすめ』

「狂い」のすすめ (集英社新書)「狂い」のすすめ (集英社新書)
著者:ひろ さちや
販売元:集英社
発売日:2007-01
おすすめ度:4.0
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以前読んだ禅の本に似ている。作者が仏教の人だからだろう。
けれど話の中身にはキリストの話とかも出てくる。
結局現在の日本が狂っているんだから、そこからひとつ狂うことでまともになれる、とかなり過激な要約をするとそうなる。

面白い逸話がある。
アリの集団の中で実際に働いているアリは2割ほどで、残りの8割は怠けものなのだそうだ。
そこで働く優秀なアリだけでグループを構成してみると、なんと8割が怠け者に転身してしまう。 
面白いことに、怠け者100%のアリグループというのを作ってみると、そのうちの2割が働き者に変わるというデータもあるようだ。

現代日本では、全員が働きアリになるよう教育されているし、教育を施す方も受ける方もそれをこなすことこそ正しいと信じている。
その結果が今の疲弊し、閉塞した日本であると云えないか。
怠け者を負け組と揶揄し、また低所得者高所得者を妬む社会になっては継続するのは難しくないか。
お互いの役割があって、社会が成立していることを忘れているように思える。
もちろん生活に困窮するほどの貧困層が拡大している今、そんな悠長なことは言ってはいられないのかもしれない。

現代社会が狂っていると断じ、それなら自ら、世間で云うところの「狂った人」になるのがいい。
そう論じる本書を読んで、とっくの昔に自分は狂っていると思ってしまった。

(旧ブログからの転載)