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過去記事置き場

「即戦力なんて最悪ですよ」とMr.ダイソンは言った - 『スティーブン・ジョブズ驚異のイノベーション』より

ジェームズ・ダイソンとは、ご存知「吸引力が落ちないただひとつの掃除機」で有名なあのダイソンのダイソンである。

巷で話題の『スティーブン・ジョブズ 驚異のイノベーション』の中で、 彼はイノベーターを雇い入れる難しさを語っている。

スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則
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問題は、本社と人事部があり、欲しい人材を書類に書いて提出しなければならないことです。そうすると、書類に書かれているような 人を人事がみつけてくる。私はこれではだめだと思っています。リクルートするとき、自分たちの分野で経験を積んだ人を連れてくるのはまちがいなのです。「即戦力」なんて最悪ですよ。大嫌いな言葉です。ぴったりとはまるケースもありますが、不要な経験を積んでいることが多く、結局、再教育が必要になります。だから私は、新卒か、あるいは、他の分野でおもしろい仕事をしてきた人を採用します。でも、採用担当者にそう考えさせるのは至難の業です。

『スティーブン・ジョブズ 驚異のイノベーション』P64 

組織をイノベーティブに保つには多様性が大切だと聞いたことがある。
似通った、即戦力を雇うより、ポテンシャルの高い他分野の人間を雇った方が自分たちにない視点を得ることができ、柔軟な発想が可能になる。

イノベーターを拒むとどうなるか

ダイソンは初め、発明した掃除機を大企業に買い取ってもらおうとした。
その中のひとつ、フーバー社は掃除機用紙パックの販売という短期的利益にとらわれて、ダイソンの発明品を採用しなかった。
その後ダイソンは直接掃除機を売り始め、フーバー社を含む他社製品よりも高い人気を博した。

後にフーバーの役員がこう語った ——— あのときダイソンの発明を買いとり、握りつぶして世の中にでないようにすべきだった。そうすれば、フーバーの優位は揺るがなかったのに、と。

『スティーブン・ジョブズ 驚異のイノベーション』P64  

人は自分の保身のために、ためらいもなくイノベーションを葬り去る。
「自分が当事者であればそんなことは考えない」と言う人もいるだろう。
しかし現実に目の前にイノベーターが現れたとき、拒否こそはしないかもしれないが、採用にも至らないのではないか。
よくわからないから「様子見」ということにして、そのまま保留になっているものは山ほどあるのではないだろうか。

つまるところ雇い入れる側にも情熱が無ければ、新しいことを成し遂げようとする人間が寄り付くとは思えない。
本気でイノベーターを雇いたいのであれば、様子見の風見鶏になったりせず、なんであれ試すことが大切である。
その姿勢こそがイノベーターが求めてやまない環境なのだろうから。