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『働かないアリに意義がある』軽くSFでした。

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
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フリーライダーなサラリーマンをアリを使って擁護する書籍なのかと思ってたら全然違った。
むしろ軽いSF。
この本を題材にしたらエイリアンの新シリーズが書けそう。

働かないアリの意義とは何か。

  • 要するに労働力の冗長化
  • リソースを目一杯使って日々の仕事をしていると、コロニーを揺るがすような事態が発生したときに余剰の労働力が無くて対処出来ず、最悪の場合はそのまま滅亡してしまう可能性もある。
  • 効率を優先する社会においては、余剰労働力を余さず活用することが大切なように思えるが、長期的視点に立てば、常にバッファを保持している方が望ましい。
  • 「働かないアリ」とは怠け者のことではなく、人間社会で言うところの「腰の重い人」「のろま」「ばか」「まぬけ」といった類のものである。
  • 仕事に対する反応閾値が低かったり、手際が悪かったりするが、仕事そのものにはちゃんと反応する。
  • バカなアリのおかげで既定から外れた新ルートを開拓出来たりする。

フリーライダーもいます

  • 種によっては「社会寄生種」という本物のフリーライダーが存在する。
  • 相手の種の女王を殺し、その匂いを自分の体にこすりつけ、自らが偽物の女王として振る舞う種がいる。
  • またサムライアリという種は、他の種の子どもを拉致して奴隷として働かせる。

クローン軍団

  • ハキリアリの一種にはすべてのコロニーメンバーは完全な遺伝的クローンという種が存在する。
  • 自らの遺伝子を残すという個体間で発生する自然界では当然の闘争が、全員クローンなため発生しない。
  • 種という観点に立つととても利他的な集団になる。
  • クローン社会でも個性は大事。各個体の個性によって多様性を維持している。
最初の方の、働かないアリに関する説明では、現代の労働とは何だろなと考えさせられたし、それ以降のフリーライダーやクローン生殖の話はフィリップ・K・ディック的な、薄気味悪いSFを想起させる。
しかしながら、生物の世界では適者生存のためにこのような遺伝子レベルの進化が行われている訳で、やがて人間社会もこのような形に近づくのだろうか。