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偉大なるロボットポルノ『パシフィック・リム』

映画を語るのは常に難しい。
なぜなら、映画は映像と音響で成立していて、言葉で語れないものを表現する媒体だからだ。
それを再び言葉にすることは至難の技であり、安直な言葉で言い表すことほど映画を汚す行為もないだろう。

とは言うものの『パシフィック・リム』は映画だろうか?
僕たちの知っている映画とは、『インデペンデンス・デイ』とか『トランスフォーマー』みたいなはっきりしたストーリーとキャラクター、勧善懲悪のスペクタクルでは無かったのか。
ハリウッドの基準に照らせば、ほとんどストーリーと言えるほどのものがなく、ただひたすら巨大ロボットと怪獣がどつきあいし続けるこの作品は映画なのだろうか?

もちろん。紛れも無く映画である。
むしろ、これこそが映画であると言っていい。

映画はストーリーだ!なんて言ってる人を否定するつもりはないが、それだけが映画などと思ってもらっては困る。
むしろ映画であることの美しさは、ストーリーから離れたところにあるのだ。
これを観てとれなければ、本来傑作であるにもかかわらず、観る側の教養不足(というより感性のなさ)によって駄作にカウントされてしまう。
たとえばスピルバーグの『宇宙戦争』とかマイケル・マンの『コラテラル』とかね。

話が脇にそれた。
ロボットと怪獣が殴りあっているだけの映画が傑作になるのか。

なるとも。目をちゃんと開いてよく見てみろ。
だいたいなんだ、このツボを抑えた演出は。
音楽カッコ良すぎるだろ。
そもそも途中から人間の描写をどうでもいいと感じるって、かなり凄い映画だからね。本気で主人公たちの運命とかどうでも良くて「ジプシー・デンジャーは大丈夫かな!?まだ活躍するよね!?」みたいな気持ちで観てたぞ。

あと最後の闘いが水中ってちょっと悲しいと思う。
もっと地上で派手に戦うバトルがあとせめて3回ほどやるべきだったね。なんならジャッキー映画みたいにスタッフロールの最中に流してもらっても良かったよ。あるいはYouTubeの有料作品として流してもらっても良かったんだよ?
とくに中国とロシア。国として好き嫌いは別として、あいつらのロボット凄くイカしてるのに素早い退場で悲しかった。どんぐらい悲しいかというとストライカーのパイロット親子の別れが非常にどうでもいいと感じるくらい悲しかった。親子とかどうでもいいからね。この映画ほど大半の人の生命がどうでも良いと思える作品もないよね。パイロットの死より、パイロットと一緒に破壊されるロボットがもう二度と動かないってところに心の吟撰が触れる、そんな作品なんだよ。

こんな気分にさせてくれる映画が偉大じゃないわけがない。
メルトダウンで核爆発起きねえだろとか、水圧とか酸素とかもう色々突っ込みどころ満載なんだけど、それを突っ込むのは野暮ってもんだし、大半のロボットアニメなんていかにして流すかというスキルがないと見れないものばかりだからね。この作品を観て、是非そうした大人の教養を身につけてほしいものです。

ついでにロボットポルノとはWiredの記事載っていた以下が元記事。

"この映画を観るべきかどうかって? 答えはもちろん「イエス」だ。なぜなら、この映画は「100%純粋なロボット・ポルノ」だから。ポルノにストーリー性や演技、音楽の出来なんて、そんなに求めないでしょ?"


イタリア人オタクジャーナリストが太鼓判! この夏、観るべきは『パシフィック・リム』!?

イイコトイウネ!ソノトオリダヨ!!

Pacific Rim Soundtrack
※早く日本でもサントラ出せ。