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過去記事置き場

使命感とリーダーシップ

通勤の行き帰りの電車で『V字回復の経営』というビジネス小説らしきものを読んでいる。
あらすじは「腐ったミカンみたいな事業部を立て直す」というもので、まだ読み途中ながらとても興味深く読んでいる。
それで、この腐った事業部を立て直す外様(事業部外からの抜擢という意味)の事業部長が責任重大なわけなのだけれど、厳しい人なわけですね。まあ落ちている事業を立て直すか、潰すかの二択を二年という期限付きで実行しなければいけない訳だから、それがどれほどの凄いプレッシャーなのか、とても自分には想像がつきません。

そうした中で、事業部内から芽がでそうな人材を選抜してタスクフォースに抜擢するわけだけれど、やはり要求が厳しいわけです。
タスクフォースの人間は朝から終電までひたすら働き詰めで、土日も仕事のことを頭から離させない感じで。事業部長の要求に応えるには、それくらいハードに取り組まないと達成できないのでしょう。

しかもこのハードモードに終わりが見えません。
「最初の4ヶ月が勝負だ」と事業部長は宣言していたので、それが過ぎたら落ち着くのかなと一瞬頭をよぎりましたが、それはストーリーの流れから言って無さそうです。本の半分くらいではまだまだ腐った組織マインドは健在みたいだし、修羅場はこれからだ!みたいな空気を醸しだしてましたから。かわいそうなタスクフォースの人々は最後までハードに働かされつづけるのでしょう。アーメン。

などと読んでいると「ブラックとは何か」とか、経営とは厳しいものかなどと感じるわけです。
マネジメント層の仕事をするのならハードワークは当たり前、というのはある程度理解できます。成果が大事ですし、そのために高い報酬を受け取っているわけですからね。
ただね、金が欲しいからという理由だけでこのハードワークをやるのは厳しいだろうなとも思うわけです。

ハードワークを厭わないのは、向いている仕事であるだけでなく、やはり使命感が大事なのではないか。使命感のないところではハードワークはこなせない=リーダーシップを発揮できない、ということもあるかなと。

もちろん、定時に来て定時に帰る働き方はとても大切です。本来はマネジメントだろうがなんだろうが、できるだけ働かないで成果を上げるのが一番なんです。でもそれができない時がある。たとえば事業が立ち上がって、いつ利益が上がるのかわからない状況とか、放っておいたらここに居る人間全員が三ヶ月後に失業するとか、そういう状況になったら否が応でもハードワークをこなさざるをえないでしょう。

平社員は経営に責任が無いですから転職すれば済みます。とくに僕みたいなエンジニアなんて逃げやすいですから、少しでも経営が怪しくなったらすぐ転職サイトで求人状況を確認しますからね、ええ。

リーダーシップの発揮をスキルとして行える、なんて人はハッキリ言ってエリートだと思います。
僕みたいな普通の人はなかなかそうはいかない。そこに使命感とか、何か心を揺さぶり続けるものがないと、ふとした瞬間に糸が切れた凧みたいになって、フラフラと責任をほっぽり出して転職しちゃうと思うんですよ。

この『V字回復の経営』を読んで強く感じるは、使命感を持てない仕事を選ぶと後悔する、ということでした。本の趣旨とはまったく違うところだと思いますけども。

仕事をどう選ぶかといえば「適性があってお金を生み出す仕事」というパターンが多いでしょう。
けれど、こうして選んだ仕事に使命感を感じられることは少ない。
小手先で短期的にリーダーシップを発揮できても、継続的に発揮できなくなる可能性が大きい。すると上流に登れない可能性が大きい。歳をとるに従って鬱屈した人になるかもしれない。こういう人は組織を腐らせます。上がりまでの残り年数を指折り数える人になるかもしれない。

だから思うのです。
いま金になる仕事よりも、使命感に燃えることのできる仕事を選ぶべきなんじゃないかと。
仮にその仕事が金にならなかったとしても、それこそ使命感を燃やしてマネタイズすればいい。
実のところその方が現実的なのかもしれない。

経営を学んだから経営者になるわけではない。
使命を果たすためにやらざるを得なくなって経営を学び、実践する。
これこそが正道なんじゃないかと思うわけです。