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『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』

巷で話題のノマド的な働き方に強い影響を与えていると思われる本です。

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
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読んだ実感としては、
  • これはアメリカの話であること
  • 誰もが夢見れる話ではないこと
  • 終わりの方の話が何言ってんだかよくわからないということ

である。


アメリカの話

日本と文化的に違う、ということまず忘れてはいけない。
とは云うものの、この本を読んでいると意外な事実を知る。

会社に対する忠誠心やら、社員を家族的に捉えるやら、勝手に日本的なものだと思い込んでいたがそれはアメリカも同じであった。というかアメリカの方がその傾向になったのが早かったのだと思う。
会社人間、日本で言うところのサラリーマンに該当する言葉が「オーガニゼーション・マン」という長ったらしい名前で、本書では呼ばれている。

じゃあ一体何が違うのかというと、3つあると思う。

1つ目は、独立・自立する者を尊敬する(リスペクトする)文化である。
2つ目は、役割分担、責任の分化である。
3つ目は、健全な、リスクに対する考え方である。

この3つがあるからこそフリーエージェントがこれほど増えることができたのではないかと私は思う。

誰もが夢を見られるわけではない

ノマドの話と同じ問題がある。
よりにもよって例に出てくる人たちがプロフェッショナル精神溢れる有能な人たちばかりなのだ。
若くして出世の階段登っちゃったけど、もっと現場に関わりたいの、みたいなことをしれっと言っちゃう。
そもそもダニエル・ピンク自体が若くしてロバート・ライシュの補佐官や、アル・ゴアのスピーチライターをやっていたりして、明らかに人間としてのベースが違うんじゃないのと思うことが多々ある。

でも考えてみれば当たり前の話だ。
フリーエージェントというのは能力を売っているのだ。
能力の無い人は売れるものが無い訳だから、そもそもフリーエージェントなんかなれやしない。

企業から見てフリーエージェントであって欲しい人というのは、本来は他社(ライバルなど)に囲い込まれているような有能な人材である。
そういう人たちが組織の外で、能力を売ってくれるというのであれば、そりゃ金を払う。
どこの世界も「人手」はあるけど「人材」は不足しているものだ。

だから能力のない人たちは、底辺のフリーエージェント的労働体系である派遣社員となってしまうのだ。
このあたりの実情もちゃんと触れているのがこの本のいいところだと思う。
誰もがフリーエージェントとして成功できる訳ではないのである。

よくわからないこと

終わりの方は、これからどういうことが起きるかといった未来の話をするわけだが、サブプライムローン破綻前の書籍だからか、ファニーメイがやっていた証券化の手段が未来かもしれない、などと書いてたりして、つくづく一時のトレンドから予測する未来なんて全く当てにならないなと思った。

そのあたりのことを読んだら急に読む気がなくなっちゃって、飛ばしてしまった。

まとめ

面白いのは半分くらいまでの、フリーエージェントという業態でどうやって仕事をやるのか。
どういう経緯でなったのか、というところまでだろう。

ただ最初にいったとおり、これはアメリカの話で、日本でやるには制度的な面、そしてそれ以上に文化的な面で変わっていかないと結構厳しいのではないかと思っている。
どうしても信用のベースが組織の所属を見るからだ。
日本における信用は、個人の名前よりも名刺の所属組織なのだ。
最近は少しは変わってきているのかもしれないが、何しろ金を握っているのは大抵はおっさんであることを考えると、楽観できないだろう。

フリーエージェント社会が到来したら、面白いと思うし、働き方の多様化という面でも、能力のある人はもっとフリーになってもらいたいと思う。
ただし、日本では、どうだろう、と。
あとがきに「今すぐなれ!」という無責任なことが書いてあったが、私見としては、今すぐなるべきではないだろう。

まずは副業かはじめるべきではないだろうか。